関西じつわ なにわ電脳探偵団総集編 1回−18回 全編 私は、日本ジャーナル出版発行の週刊実話の関西版に当たる関西じつわになにわ 電脳探偵団という連載をもっていた。読者アンケートでは、非常に好評という事 であた。ここに、全18回の連載をまとめてみる事にする。 関西じつわは、第2.4月曜日発売である。一般書店・駅売店以外に、コンビニ でも売っている。皆さん、買って下さい。 なお、以下の各原稿は、実際に掲載されたものと少し異なっているものもある。 第1回 1997.4.28発売 1997.5/12号 ハッカーと対決!! 日本コンピュータクラブ連盟(通称日コン連)は、全国69大学のコンピュータ クラブの連合体でクラブ間の情報交換、技術交流、親睦などを目的に1987年 11月に創設された。本部は大阪で、以前は、東京・自由ケ丘に関東本部と呼ぶ 事務所を構えていたこともある。現在の主な活動としては、機関誌の発行やメン バーが開発したソフト(日コン連ソフト)の販売、大阪・日本橋でパソコンショ ツプ「ケーブル」やカルチャーセンターなどを運営している。日コン連では、か つてウイルス対策のワクチンを開発して大いに注目を浴びたが、最近では暗躍す るハッカーの手口をマスコミなどを通じて暴き、ハッカー対策の啓蒙活動に全力 をあげている。 もちろん、ハッカー側から見れば、日コン連や私の動きは目の上のタンコブみた いなもので、同じ手口が2度と使えなくなるため、ハッカー達が常に集まる「U Lネット」などでは”日コン連つぶし”の策略が常に練られているという。彼ら (彼女ら)の”日コン連つぶし”は、具体的には日コン連の組織と私への、有形 無形のいやがらせという形で現れてくる。これまで新聞沙汰になった事件だけで も、枚挙にいとまがないほどだ。 ニセ山本が100人以上 日コン連が取り引きする電機店に「日コン連廃業」というニセ案内FAXを流し 、店頭から日コン連のパソコンソフトが撤去されてしまった事件、私の名前をか たって大手パソコン通信からIDを取得して使いまくるという事件、ハッキング されてたIDを使って私の自宅へ弔電レタックスが配達された事件、日コン連に 「死」と書いたFAXが1000枚以上届けられた事件、針中野にある私の自宅 の住所、電話番号がパソコン通信で公開される事件などなど。このほか新聞に取 り上げられなかったものでは、注文していないのに商品が届くというのが大半。 高額なパソコンシステム、アダルトビデオや青汁、果ては日本直販の高枝切りパ サミなんていうのもあった。いたずら電話も日常茶飯事。自動的に何度も電話が かけられるデーモンダイアラーを使ったものもあり、そのしつこさは相当なもの だ。最近ではインターネットを通じて何千通もいたずら電子メールを送り付け、 相手の通信システムをパンクさせる「電子メール爆弾」の直撃を受けた。これは 、米国の悪質ハッカーが開設したホームページから入手したものらしく、数種類 が、国内の地下ネットで出回っているようだ。このほか全国の草の根ネット(B BS)で、「日コン連・山本隆雄」を名乗る人物が100人以上いると言われて いる。そんな中で有名なのはオウム真理教のネットで”臭い”などとケンカを売 っていた「ニセ山本隆雄」がおり、これにはさすがのハッカーも私の身を案じて くれたぐらいだ。どうして私がこんな目に、と思われるがマスコミの人たちに言 わせると有名税なので仕方がないとか。これからもハッカーからのイヤガラセに 屈することなく、彼らの手口を暴いていきハッカー対策に取り込むつもりだ。 第2回 1997.5.12発売 1997.5/26号 コンピュータ・ウイルスとの戦い ひところ、ハッカーの手によってコンピュータのプログラムを破壊するウイルス が何種類か出没し、かなりの被害が出た事があった。 私ども日本コンピュータクラブ連盟では、被害の拡大を防ぐため「日本コンピュ ータウイルス研究学会」を設立し、ウイルスを撃退するワクチンソフトの開発に 乗り出した。 そこで生まれたのが「サイバーワクチンいてこまし」で、日本で最初の店頭売り パッケージワクチンソフトとして評判を呼んだ。 その仕組みを簡単に説明すると、コンピュータウイルスはもとのプログラムを動 かしつつ、裏でうごめくのが特徴。そのためウイルスはあるプログラムを乗っ取 ったとしても、もとのプログラムを完全な形で保存する必要があるわけだ。そこ でこんな方法がとられる。もとのプログラムの先頭の数バイト(文字)を書き換 え、ウイルス作動部分はもとのプログラムの後ろに追加するのである。 ワクチンソフトはプログラムの後ろにくっついたデータの中に、ウイルスプログ ラムが持つ固有のデータと同じものがないかを調べるわけだ。 わかりやすく言えば、「日コン連」というウイルスがあるとすると、ワクチンソ フトはプログラムの後ろから検索を始める。その作業の中で、「日コン連」とい う文字が見つければ、そのウイルスは「日コン連ウイルス」と決め付けて、プロ グラム部分から「日コン連ウイルス」を削除し、書き換えられた先頭部分を元に 戻す作業を行うのである。 そんな中で、他社のワクチンソフトでは検索出来るのに、日コン連の「いてこま し」ワクチンでは検出できないウイルス「自由ケ丘1号」の亜種が発見された事 がある。ハッカーどもは、「日コン連のいてこましはパチもんだ」とののしった。 その亜種を入手し、調べたところ、そのウイルスプログラムの1701バイト( 文字)のうち、14バイト(文字)だけが書き換えられていたのである。その1 4文字のうちの6文字は「いてこまし」がウイルスであるかどうかを判別する文 字列だったわけだ。つまりこの亜種は「いてこまし」の検出を逃れるためだけに 作られたもので、私どもはこの亜種を「自由ケ丘2号」と命名、すぐに「いてこ まし」で検出できるようにした。 次はウインドウズ95? この事件で驚いたのは、ハッカー側も「いてこまし」のウイルス判別方法まで解 析していた事だ。敵ながら天晴れというところか。コンピュータウイルスはその 後も感染するごとに姿を変えていく。ワクチン検出を難しくしたエイズ型ウイル ス「四つ橋1号」125世代以降25世代ごとに発病する「針中野1号」、発病 するとパソコンそのものが動かなくなる「エボラ出血熱型」など、コンピュータ ウイルスは進化してきた。しかしこれらのウイルスは現在、ほとんど絶滅してし まった。というのも、パソコンで使われるOSがMS−DOSからウインドウズ 95が主流になってきたからである。進化し続けていたMS−DOS上のウイル スも住処がなくなり、死に絶えていったようだ。 私はまだ一度も噂に聞くウインドウズ95上のウイルスにはお目にかかったこと はない。でも油断は禁物だ。ウインドウズ95上のウイルスが日本国内でも発生 し被害をもたらすかもしれない。 第3回 1997.5.26発売 1997.6/9号 社会現象をゲーム化するハッカー 地下鉄サリンゲーム「霞ケ関」に始まって、社会現象を次々ゲーム化して楽しむ 風潮がハッカーの間に発生している。 マスコミ報道されたゲームだけでも「QASONSI(QA尊師)」、「QAS ONSI2」、地下鉄サリンゲーム「霞ケ関」、「地下鉄に乗って」、「文鮮明 の野望:復刻版」、「殿様VSサタン」、「古平トンネル崩落事故−犠牲者救出 遊戯」、「倉庫番IN上九一色村」、「反フランス核実験」、「日立ゲーム」な どなど。この4月に発見したのは、非加熱製剤の投与でHIV感染者数を競う「 HIV GAME」、5月には、リマの日本大使館に爆薬を仕掛け爆破、仕掛け た場所によって、結果が変わる「人質救出遊戯」とシロモも出た。これらのゲー ムはすべて日コン連が発見し、マスコミなどに発表したものである。 こういった不謹慎ゲームも厳密には色々なパターンに類別する事が出来る。地下 鉄サリンゲーム「霞ケ関」に代表される”超不謹慎モノ”、「文鮮明の野望:復 刻版」に代表される”パロディモノ”、「倉庫番IN上九一色村」のウイルス破 壊モノ、「殿様VSサタン」のような”シューティングもの”といった具合だ。 こんなゲーム作成が何故流行るのか?まず、作者が誰か知られる事なく、匿名の まま世間にゲームを流す事が出来るからであり、それらが、マスコミに取り上げ られ、騒がれるからであろう。ひとくちに不謹慎ゲームと言っても、地下鉄サリ ン事件直後で、まだ逮捕されていない麻原彰晃に「地下鉄サリン事件は我々がや りました」と答えさせている「QASONSI2」や、フランスの国旗やシラク 大統領の顔にボールをぶつけて撃退する「反フランス核実験」は、プレイしても 不快感はない。また、「日立ゲーム」のような内部告発モノは、それなりにやっ ていて楽しい。 不快なゲームは作るな やり切れないのは、「HIV GAME」のように、被害者の実名を出して、の のしったりするモノだ。こんな卑怯で非人道的なゲームは決して容認できない。 また、「倉庫番IN上九一色村」のように、荷物がルールどおりに運べなかった 時、「ポアする」と言って、接続されているハードディスクやフロッピィディス クドライブをすべて本当に消去してしまうゲームは、プレイヤーの立場から絶対 、許すことが出来ない。 こんな不謹慎ゲームを罰すべき、という声もあるが、表現の自由とのかねあいで 、難しい。私ども日コン連が主催するケーブルネットでは、「HIV GAME 」等不謹慎ゲームは、内容が判明した時点で、ただちに削除している。匿名によ る”社会現象ゲーム”の制作については、関係者の良心に期待するしかないよう だ。 第4回 1997.6.9発売 1997.6/23号 ハッカーはアイデア王 ハッカーにいつもひどい目に合っている私だが、敵ながら連中はすごいアイデア マンだなぁと感心する時もある。まあ、明智小五郎と怪人20面相みたいな関係 かもしれない。これまで、私や日本コンピュータクラブ連盟(以下日コン連)が 遭遇したり、暴露した彼らの手口をいくつか紹介してみたい。 ひところ、大阪で、中学生や高校生が中心になって”ただかけ電話”でダイヤル Q2にかけ、キャッシュバックとしてダイヤルQ2の接続料金の50%をバイト 代として受け取る事が流行したことがある。”ただがけ電話”の方法はCカード とオートダイアラーを使うという簡単なものだ。Cカードとは、クレジット通話 に使うカードで、自分の電話番号、暗証番号などをあらかじめ登録しているカー ド。またオートダイアラーとは、手帳サイズの電子機器で電話をかけたい先が何 件でも登録でき、それを直接、送話口にあててダイヤル音を発信する事によって 電話がかけられるというものだ。Cカードを公衆電話機に挿入すると、「ツー」 という音がしてから、手続きを自動的に行うため、「ピッピッポッパー」に変わ るが、先の「ツー」という音がした直後にオートダイアラーから発信すると、C カードが自ら発信する「ピッピッポッパー」より、オートダイアラーの発信する 「ピッポッパ」の方が優先され、かけたい先に無料でつながる仕組みだ。 また、変造テレカにはあたらないという見解を示したマスコミも現れ、物議をか もしたのが、「紙貼り永久テレカ」だ。これも原理は簡単。テレカの裏側に幅4 ミリの紙を貼るだけのものだが、その貼る位置がミソ。詳しくは紹介しないが、 この紙貼りテレカを緑の丸ボタン式公衆電話に「空通し」すると度数が元にもど るという巧みなものだった。これらの手口をマスコミなどに発表したため、彼ら も使えなくなり、私や日コン連はハッカーから猛顰蹙(ひんしゅく)をかったが 、いまだに不思議なのは彼らはこんな方法をどうして発見したのかという事だ。 彼らの才能を「善」の部分で生かせられば良いのだが、・・・。 こんな日進月歩のハッカーたちの技術でいま、頭を悩ましているのはイタズラ電 話、いわゆる”イタ電”だ。かつてのボイスチェンジャーを使ったものから、パ ソコンと連動させたデーモンダイアラー、最近ではリクルートのFAXサービス を利用したものまで、時代とともに変わってきた。最初の頃は、”イタ電”の内 容がテープに採られていてもいいように、ボイスチェンジャーを使って声を変え 、言いたいことを言うのが流行した。今から思えば、こんな手口はまだかわいい ものだった。その後、アメリカのハッカーが開発したデーモンダイアラーが日本 に上陸、多くの被害をもたらしていく。 これはパソコンとモデムを使うもので、デーモンダイアラーというソフトをセッ トすると、電話が自動発信するのである。電話のベル回数を5回と設定しておく と、電話のベルを5回鳴らしては切るを延々と繰り返すのである。しかも相手が 受話器を上げると自動切断するため、通話料はとられない。電話が通じた状態で はないので、”迷惑電話お断りサービス”も使えない。さらに、デーモンダイア ラーの直撃を受けている最中は外部からの電話は話中で一切通じない。 ”イタ電”悪知恵にほとほと感心ですわ この”イタ電”の王者もNTTの交換機の性能が良くなり、呼び出し音だけで発 信元が特定され、デーモンダイアラーを使うと警察に捕まるという話がハッカー 連中に広まり、今ではカゲを潜めている。 かわって登場したのが、”イタ電主”が特定されない「リクルートFAXサービ ス」の悪用である。このサービスは、色々な会社がリクルート社と契約、資料請 求があれば契約会社の情報をFAXで送るもの。ハッカーたちは、このサービス が、24時間、どこの電話を指定しても資料が送られることに目をつけ、今や” イタ電”の主流になっている。日コン連や私の自宅も彼らの攻撃目標にされ、同 じ内容の資料が1日に何回も送られてFAXがマヒしてしまった。このため、日 コン連や私の関係する電話7回線については、2度とリクルートFAXサービス がかからないようにしてもらっている。 ところで、やれやれ一安心と思っていた矢先、自動コレクトコール108を使っ た”イタ電”が日コン連に相次ぎ、困っている。コレクトコールが自動化され、 交換手が出なくなったため、イタズラしやすくなったのである。手口は、自動コ レクトコールで、自分の名前をいう部分にイタズラ言葉を吹き込むというものだ が、かなり悪どいセリフもある。 これらアイデアの王様といわれるハッカーたちとの飽くなき、かつ仁義なき闘い が、これからも延々と続きそうだ。 第5回 1997.6.23発売 1997.7/14号 年収4000万円天才・高校生ハッカーの話 いま日本に実在するハッカーは約2000名。そのうちの8割までが高校生と言 われている。私ども日コン連は、大阪・日本橋でパソコンショップ「ケーブル」 を経営しているが、この店がオープンしたのは、一昨年12月。これ以前から会 員の中には、ハッカーはいるにはいたいたが、たいしたレベルのものはいなかっ た。ところで店を開くようになってからは、スゴ腕のハッカーたちが何食わぬ顔 で店に出入りし始めたのである。 昨年2月、高校生Aが初めて店に来た。のちに”年収4000万円の天才ハッカ ー”としてマスコミに騒がれ、京都府警に御用になった少年である。その時、A は大阪府下で御三家に数えられる有名府立高校の1年で東大志望と言っていた。 私が面識をもった高校生ハッカー達の共通点は、いずれも有名進学高校に通い、 志望大学は東大か京大。非常に頭が良く、家庭は裕福、子供の時からパソコンが 買い与えられ、パソコンに対する知識・技能は猛烈に高いと言うものである。 というわけで、店に来る高校生がハッカーかどうかを見分ける事はいたって簡単 である。それはサイフの中を見ればよいのである。 天才高校生ハッカーAは大胆にも私どもの店でマスコミ各社の取材に応じてた事 がある。このとき厚かましい記者が彼のサイフを調べたところ、1万円札が20 枚ぐらい入っていたという。現金以外にも他人名義の銀行通帳も多数持っており 、ある通帳などは1件1万2000円〜1万5000円の振込が続き、わずか2 週間で63万円もの入金が記録されていた。どうやらこれは他人名義のIDなど をパソコン通信を使って販売していたものらしい。 またAは得意そうにある銀行の通帳を見せていた事がある。これには「サーチ」 という調査会社から最高で800万円の振り込みがあったほか、100−200 万円の振り込みがいろいろな会社からされていたという。Aによるとその通帳は 、車のディラーの顧客データを販売しもので、この「データは車の買い替え時期 の購入5年ものが高く売れる」とウソぶいていた。またAは各マスコミにハッカ ーの集会の模様を語った事がある。真偽のほどは確認出来ていないが、彼の語っ た話はこうだ。 ポンと3億円山積みも金持ちハッカーは無視 1泊40万円の阪急インターナショルホテルのスイートルームを借り切って集会 を開催。6枚ドアのベンツやリムジンで乗り付けた高校生ハッカーたちがつぎつ ぎ現れ、人数も約10名。中央に有名大学生のボスが陣取り、テーブルの上には 、3億円の現金が積み上げられてあった。ボスは集まってきた高校生ハッカー達 に、「遊びに使いな」とその3億円をポンと投げ出したというのだ。しかし、そ の3億円には誰も手をつけなかった。というのも彼らは金には困っていないから だ。何となくウソみたいな話だが、Aが真剣に語っていたところをみると、あな がちホラではないものかもしれない。 日本のハッカーの世界では徒弟制度が確立しており、稼ぎの30%を上納金とし て師匠に差し出すのが慣例となっている。このため、年収数千万円の高校生ハッ カーたちを配下にもったボスは、上納金だけでも大変な金額になるのである。 Aも年収4000万円と豪語しており、その生活態度もおよそ高校生離れしてい る。通学や日本橋に来る時は普通、タクシーを使うと言う。これだけでも贅沢な 話だが、彼は車のレンタル会社とBMW車を契約、必要な時に、必要な場所に、 ドライバー付きのBMW車が用意されるというから驚きだ。 高校生でこういう生活を覚えたら大変だ。彼は警察に補導され、現在は強制的に ハッカー界から足を洗わされて、まっとうな人生を歩もうとしているのだが−。 第6回 1997.14発売 1997.7/28号 荒稼ぎの高校生ハッカーたち 前号で、年収数千万円の高校生ハッカーたちの優雅な暮らしぶりを紹介したが、 どうしてそんな大金が稼げるのか。今回はその手口に迫ってみたい。まず高校生 たちが私的に行う小遣い稼ぎは、ニフティのハッキングIDの販売だ。これは「 ハッキングマクロ」と呼ばれるハッキングツールとNTT夜間電話定料金サービ スのテレホーダイを使って、夜寝る前にパソコンにプログラムをセット。朝起き ると、いくつかのIDパスワードのセットがパソコンの中にとりこまれているわ けである。それをパソコン通信やインターネット上で販売するのである。ちょう ど漁師が夜、網を仕掛けておき、翌朝、網を引き上げて魚を獲る要領だ。ニフテ ィなど200万人以上会員がいるネットでは、狙いを定めたID群によって、パ スワードの捕獲率が大きく異なるという。どの番号群を狙うと多くのパスワード が獲れるかは、各ハッカーそれぞれがもつノウハウだそうだ。これも、漁師が自 分だけ持つ漁場に匹敵する。 この価格づけも面白い。大漁であれば価格が下がり、不漁なら上がる。需要と供 給のバランスがちゃんとあるのだ。また魚に高級魚があるようにIDにも価格差 がある。一般にほとんど使用されないIDほど盗まれた本人に発覚する恐れがな いため、価格は高い。逆に頻繁に使われているIDはハッカーの世界では”アク ティブ”ものといわれ、発覚が早いため当然価格は安い。ハッキングされたID は、すぐに売りに出されるのではなく、その使用頻度をみて販売価格が決まるま で、そのまま置かれているケースが多い。このため、頻繁にパスワードを変えて いれば、たとえハッキングされたとしても被害が少なくてすむ。 このID販売で彼らはどのくらい収入を得るのか。ある時、高校生ハッカーから ニフティハッキングIDの販売通帳をコピーさせてもらった。写真はその時のも のだが、2週間で62万円余の入金が確認出来る。 ハッカーの名簿大手企業も利用 IDハッキングは高校生ハッカーたちの小遣い稼ぎだが、ハッカー組織ともなる とその規模が違う。主に名簿売りで1回の販売金額は200−1000万円にの ぼる。 売れ筋の名簿は車の顧客リストなどだ。たとえば、自動車販売会社○○統括本部 といったところに照準をあてる。各ディラーから報告されてきた顧客データのう ち、購入後5年目の顧客データをハッキングし、それに金融機関や信用機関から ハッキングしたデータをセットして、ライバルの自動車会社に販売するのである。 車の買い替えの時期であり、現在どういう車に乗っていて、年収や住宅ローンな どの負債があるかどうかなど総てのデータがそろっているわけだ。 セールスマンがこのデータをもとにセールスに行けばヒット率(車販売率)は、 めちゃめちゃ高くなる。これらの名簿購入者はディラーや販売会社のほか、セー ルスマン個人という場合もあるという。ハッカーたちは、同じ地域にあるライバ ルディラーに同じ顧客データを売り、共食いをさせて楽しんでいると言う。 車以上に高い金額で取り引きされるのは、病院の患者データだ。大学病院を中心 に大手の病院では、カルテなどのコンピュータ化が進み、外部の人間でもデータ のハッキングが可能になった。高校生ハッカーたちはその患者データをハッキン グし、生命保険会社に販売する。特にガンなどの疑いで検査を受けた人のデータ が高く売れると言う。何故ならそういう人の所へ生命保険の勧誘に行くと確実に 大型契約が取れるからだ。そんな形で契約すれば保険会社の方が損をすると思い がちだが、実際はこんなカラクリがある。ハッカーいわく。「告知義務違反でも、 保険に入れる。ただ保険金支払いの時に告知義務違反がバレ保険金は支払わない。 保険会社は丸儲け」困った話である。あるマスコミ関係者は、「総会屋との関係 が発覚したみたいに、あと10年くらいたてば、ハッカーとの関係が発覚し、袋 叩きにあう大手の会社が出るはず」ともらす。 第7回 1997.7.28発売 1997.8/11号 「酒鬼薔薇」事件騒動 ことし最大のニュースは、何といっても、神戸の酒鬼薔薇事件である。この事件 では、過去、例をみなかったほど、インターネットというものが注目を集めた。 これらの中で世間にインパクトを与えた2つの騒動を紹介してみたい。 まず一つ目は、インターネット上の「酒・鬼・薔薇文字」文字表示騒動だ。これ は岡山県のパソコン教室の講師が今年2月、酒・鬼・薔薇の文字を大阪・西中島 でインターネットカフェを開いているビーエルシー社のビッグスリーネットのホ ームページで見たというものだった。この証言をスクープしたのはテレビ朝日の 「ニュースステーション」と「読売新聞」である。 私ども日コン連には他のマスコミ各社からこの件での問い合わせや取材が殺到し た。このためニフティなどでこの証言に関しての情報収集を行ったが、残念なが ら収穫はゼロだった。いつもなら「ゲロブ、教えてやろうか」(ゲロブとはハッ カーたちが私につけたニックネーム)と偉ぶったハッカーたちからの情報が届く のに、今回に限ってサッパリ音沙汰がなかったのである。 そのため私は他のマスコミ各社の取材に対して「その証言は勘違いではないか」 と話していた。というのも、@目撃証言した人はその時の画面情報を保存してい なかったAホームページ開設者は自分のホームページにそのような書き込みはな かったと断言しているB一般的に考えて犯人がホームページに身元が割れるよう な書き込みをするかどうか−という点からである。 ところがスクープした読売新聞では連日のように新たな目撃証言が次々と報道さ れていたのである。他のマスコミ各社が不思議がったのは、岡山の証言者以外の 新たな目撃者はすべて某インターネットのサークルの会員で、これらの目撃者と の接触はすべて読売新聞を通さなくてはならない点だ。私はくだんの某インター ネットなど全く聞いた事がなかったので、マスコミの問い合わせに対しても、「 知らない」と答えていた。 A少年の写真が米国HPで放置 その後、警察庁がインターネットのプロバイダーからログ記録の提供を受けて調 べた結果、酒・鬼・薔薇の書き込みは存在しないこと、岡山の人以外の目撃者も いないことが明らかになった。この騒動の時、日コン連は多くのマスコミの取材 を受けたが、読売新聞とテレビ朝日からは、この件について一度も取材を受けな かった。うがった見方をすればインターネット上に酒・鬼・薔薇の文字表示を「 スクープ」した読売新聞を見たハッカーたちが、集団で読売新聞をだまし、次々 架空の目撃証言をデッチ上げ、読売新聞がまんまとそれにはまっていたという事 も考えられるわけだ。 もう一つの騒動は犯人逮捕直後に発生した。それはインターネットの検索ソフト YAHOO(ヤフー)で、”酒鬼薔薇聖斗”と検索すると、酒鬼薔薇関係のホ ームページのリンク集が登場、その中のいくつかに、酒鬼薔薇の実名が書かれ ていた事である。さらに物議をかもした「FOCUS」発売後、同誌に出てい た酒鬼薔薇の写真をスキャナで取り込んで、実名・写真を掲示しているホーム ページが多数出現した。 私は日コン連ニュースでこれらの人権を無視した行為を指摘し、各マスコミに知 らせたため、日本国内のプロバイダーのサーバー上に開設されていたこれらのホ ームページはプロバイダーからの指導ですべて削除された。ところが、アメリカ のプロバイダーのサーバー上に開設されているホームページはそのまま放置され たままなのである。 このアメリカのプロバイダーのホームページはこれまで日コン連も被害に遭って いる。日コン連のニセのホームページや日コン連を中傷するホームページもアメ リカのプロバイダー上にあり、私どもも頭を痛めているところである。中傷はま だ許せるとしても、困るのは私の自宅住所や電話番号などプライバシーが公開さ れている点である。プロバイダーに英語で抗議のメールを送っても「編集権を行 使しない」という返事しか戻ってこない。これらの点が解決されない限り、ハッ カーどもは、今後ともアメリカの匿名・無料のホームページで酒鬼薔薇のプライ バシーを暴く行動を続けるだろう。 こうなるともう、ハッカーたちの良心に訴えるしか方法はないといえる。 第8回
1997.8.11発売 1997.8/25号 マスコミでも手を出せないインターネットの名誉毀損 今回の酒鬼薔薇事件で、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌に代わる媒体として、注目 を集めたのが、インターネットである。前号で触れたように、犯人逮捕直後から インターネットでは少年の実名と顔写真が「マスコミ殺死の酒鬼薔薇」という落 書とともに流されていた。その後、少年の実名を流したホームページは姿を消し たが、「これは朝日新聞のプロバイダーへの圧力で潰された」というウワサが流 れ、「言論殺死の朝日新聞」という書き込みも数多く登場した。この件について 私は、朝日新聞がプロバイダーに圧力をかけた事はないとみている。ただ、プロ バイダーに取材したことがきっかけで、ホームページが潰れたのではないだろう か。私は、これは当然のことだと思う。なぜならいま、インターネット上では、 匿名なのをいいことに、好き勝手な無責任な情報やプライバシー侵害の情報が飛 び交っているからだ。せめて国内のプロバイダーだけでも、野放し状態をやめる べきだ。しかし、この少年の実名などを出していたホームページがつぶれると、 今度はアメリカにあるプロバイダーTRIPOD(トライポッド)のサーバー上 に移っていったのである。日本のハッカーの大半はこのTRIPODの上に、ホ ームページを開設している。ここは完全匿名で、しかも無料で開設できる。名誉 毀損、プライバシー侵害、犯罪掲示、何でもOKの治外法権ホームページとなっ ている。 ここには、インターネットホームページ検索ソフトYAHOO(ヤフー)で、日 コン連や山本隆雄で検索できる2つのホームページが存在する。これは、ニセモ ノの「日本コンピュータクラブ連盟」のホームページ(参照数約2万6千件)と 日本チンカスクラブ連盟」のホームページ(参照数約5万件)である。 これらのホームページでは日コン連や私に対する誹謗中傷したものや私の自宅住 所や電話番号などが掲示されているのである。 某マスコミ幹部の実名を挙げて中傷 中でも日本チンカスクラブ連盟の方では、某全国紙の幹部の実名と某居酒屋チェ ーンの実名を挙げ、某幹部が某居酒屋チェーンから、箕面に8500万円の邸宅 を賄賂として受け取ったなどの話が掲示されている。私は、事実無根の作り話と 見ているが、全国紙の幹部の実名を挙げ、しかも賄賂を受け取ったという内容で は日本国内のプロバイダーでは名誉毀損で即刻削除となるはずである。 こんなホームページが1年近く放置されていることに、海外サーバーを発信とす るインターネットの恐ろしさが示されている。某全国紙の方でも日本チンカスク ラブ連盟のホームページ作成者の割り出しにやっきと聞いているが、どうにもで きないのが実情のようだ。たとえば、作成者を特定するために国内の大手プロバ イダーと結託して、逆トレースすれば違法捜査になるからである。作成者がたと え割り出せたとしても、直接抗議すると通信の秘密を犯したということで協力し てもらったプロバイダーに迷惑がかかるわけだ。 全国紙幹部であっても実名中傷に対しては、なすすべがない状態で、私のような 個人はこののままだと、泣き寝入りするしかない。TRIPODあてに抗議文を 送ったこともあるが、返事は編集権を行使しないというものだった。もちろん、 アメリカのプロバイダーが日本語のホームページを読んで名誉毀損かどうかを調 べることは無理なようだ。こんな野放し状態で人権無視がつづくようだと、日本 政府もなんらかの手を打つしかない。 こんなことには賛成しないが、社会主義国では、インターネットは通じない鎖国 政策をとっている。韓国でもピンク系の情報はシャットアウトしている。 いずれにしても、匿名、無料サービスのホームページを何とかしないと大変な人 権侵害が起きそうな気がする。 第9回 1997.8.25発売 1997.9/8号 伝説のハッカー・ビービーしんちゃん わが国のハッカー史上に残る人物は何といっても「ビービーしんちゃん」である 。このしんちゃん、ニフティでハッキングしたIDを使って、暴れまくったので ある。 しんちゃんの犯行には、必ず「月夜の雌馬みたいな不気味な目をした悪党野郎」 というしんちゃんの署名が残されている。毎日新聞などでは、「犯人はしんちゃ ん」と名指しで報道するほど有名だった。 実はこのしんちゃん、一人ではなく、複数のハッカーが作りあげた架空の人物な のである。あるハッカーの証言によれば、しんちゃんに憧れるハッカーは多いと いう。 しんちゃんがニフティのIDをハッキングして掲示を行う時には、検索キーのと ころに、beebee69 や beebee72などの書き込みがある。これ はこのIDで作られたプライベート掲示板であるホームパーティへのパスワード になると同時に、しんちゃんの識別番号と言われている。某マスコミの調べによ ると、しんちゃんは6名いたというのである。 これまでしんちゃんが犯した”悪さは、コンピュータ・ウイルスのバラまきやハ ードディスクの中身が消える爆弾メールの配布など数えきれない。新聞などで大 きく取り上げられたものに、ウイルス入りの地下鉄サリンゲーム「霞ケ関」の配 布がある。 これ以外の有名な”悪さ”としては、ニフティの掲示板破壊が強烈だ。これは、 ニフティ掲示数が常に512個で新しいものがひとつ掲示されると、古いものが ひとつ消されるというシステムを逆手にとって、自ら同じ内容の掲示を512個 連続アップして他人の掲示をすべて排除。自分でアップした掲示は自分で削除で きるため、ある日突然、掲示板には何も掲示されてないというような異常な事態 を作るのである。 1995年8月13日、しんちゃんは大石浩文さんという人のIDをハッキング し、大石浩文名で、「ビービーしんちゃん」のタイトルでニフティの掲示板のス ピリッツコーナーに掲示した。内容も「おまえの負けさ いつも勝てるわけない さ おまえの負けさ いつも勝てるわけじゃないのさ、そう言わなかったかい? わかっているよ、かわいいベイビー」という書き込みのあと、おなじみのしん ちゃんの署名「月夜の雌馬みたいな不気味な目をした悪党野郎」が入っていた のである。ハッカーたちは”掲示板破壊の神様しんちゃんの本人が特定できた とばかり色めきった。しかも丁寧に大石浩文さんの自宅住所、電話も明記され ていた。大迷惑をこうむったのは当の大石さんだ。深夜に突然、「しんちゃん いる?」「しんちゃん出してよ」の電話がひきりなしにかかってきたという。 本当にヒドイ話である。 女性の名でSEXフレンドを募集! さらにしんちゃんの”悪さ”は、エスカレートする。1995年10月15日、 わが国のネットワーク社会の歴史に残る大事件「宮田かなえ事件」が発生した。 これはその前年に起きた「美香ちゃん事件」をヒントに、しんちゃんが宮田かな えさんのIDをハッキング。宮田かなえさんになりすまして、とんでもないこと に、セックスフレンド募集の掲示を行なったのである。さらには送られてきたラ ブレターを掲示板上に公開したのだ。驚くのはわずか10時間に257通の宮田 かなえさんあてのラブレターがメールで送られてきた。このうち235通が公開 されてしまい、しかも全員が実名表示で、ラブレターの返事がほしいばかりに自 宅や職場の電話番号入りだった。そのラブレターの内容といえば、自分の性器の 自慢やセックステクニックに及ぶものまでで、詳しくは次号で紹介する。 そのしんちゃん、1995年12月13日、タブーであったお金に手を出したの である。ニフティ上で使える仮想のマネーであるアクセスギフトを、ハッキング したIDから私あてに送ってきたのである。 この事件はマスコミで大きく取り上げられ、わが国初の電子マネー事件と騒がれ た。この事件で警察も動き出し、警察に追われる立場となったしんちゃんは以後 2度とネット上から姿を消した。しんちゃんについては、NEC社員説、富士通 社員説、ニフティ社員説などさまざまに憶測されていたが、結局身元が割れない まま、突然引退した伝説のハッカーになってしまったのである。 第10回 1997.9.8発売 1997.9/22号 ネットワーク史上最大の痴情犯罪・宮田かなえ事件 前回、伝説のハッカー・しんちゃんのいたずらの数々を紹介したが、今回はその 中でネットワーク史上に残る”大いたずら”宮田かなえ事件を紹介してみたい。 1995年10月15日午後2時30分ごろニフティの掲示板文通コーナーに「 こんにちは、かなえです」 スピリッツコーナーに「こんにちは、29才独身女 性です」 のタイトルで同一内容の掲示が登録された。その一部を紹介すると− 「はじめまして、自由奔放な大人の恋愛を希望している東京の29才独身女性で す。私は若い男性自身から血管の浮き出たモノを見ると身体の芯からしびれます。 これでも昼間は英語の教師をしていて真面目な淑女なんですよ。でも、夜になる と性格が淫らに変わってしまいます。こんな私とお付き合いして下さる素敵な男 性を求めています。私をその気にさせるような言葉を添えてくださいね。163 センチ B85W61H88 かなえより」 いやはや大変な内容だ。実はこれ 、金沢市に実在するOL・宮田かなえさんのIDをしんちゃんがハッキング、宮 田かなえさんになりすまして掲示したものだった。掲示直後から宮田かなえさん のIDには電子メールが殺到した。驚くことに掲示後10時間で257通に及ん だ。 その内容もすさまじい。「僕のはいわゆる、かり、つまりくびれの部分が大きく て丁度まったけのような形をしており 女の子の感想によるとピストン運動のと きの刺激がすごくいいとの事です。それから運動をしているせいか、血流がすご くよく、勃起した時の血管がものすごくうきでているようです。(プロフィール 略)」といったものや、「私は東京の理科系の大学の教授です。大学の研究室に はINTERNETにつながっているワークステーションがあります。これは自 宅のマックで通信しています。(プロフィール略)」、「どれくらいHが好きで すか? 僕の○○○をなめてくれますか? かなえさんのような大人の女性と一 度でいいからHがしてみたいです。実は、僕は、まだ童貞なんです。家が近かっ たらHしてくれますか? (プロフィール略)」。まだまだつづく。「自分もか なりエッチです。かなえが、血管の浮き出た○○○を見たいのと同じで女のびち ょびちょの○○○○を見るのが好きです。ぜひ、かなえのいやらしい○○○○を 見たいです。オレの大きくなった○○○をかなえの○○○にずぶずぶと深く入れ たいです。もしよろしければ電話してみてください。(電話番号、プロフィール 略)」 もちろん○○の部分は伏せ字なし。しかもメールを送ったほぼ全員が実名で、連 絡先として勤務先や自宅の住所、電話番号を書いていた。 公開されてしまったHなラブレター しんちゃんのいたずらは、このあと”本領発揮”する。その日の午前零時までに 送られてきた235通のメールが、スピリッツコーナーにすべて掲示されたので ある。驚いたのは”宮田かなえ”にラブレター・メールを送った人たちだ。掲示 板の削除は、自分が掲示したものしか出来ない。といってもニフティのセンター に申し出て消してもらおうにも夜間なので電話はつながらない。仕方がないので 、掲示板破壊と同じ要領で、無意味な掲示を多数登録して押し出しの方法で削除 したのである。 しかし、この方法では削除に時間がかかり、その間に約500名以上の人たちに 見られてしまったという。 この犯行がしんちゃんであると分かったのは、私がニフティの掲示板上でその公 開されたLOG記録の提供を求めたところ、しんちゃん自らがすべてのLOG記 録を送ってきたのである。自分がしんちゃんであることを証明するために、午前 零時以降に届いたため、公開を免れた22通のメールも含めていたからである。 気の毒なのは本物の宮田かなえさん。本人は何も知らないのに「悪女」として非 難の掲示が相次いだそうだ。宮田さんは、再起不能になるほどのショックを受け たらしい。彼女が一番の被害者だろう。 また、かなえさんにラブレターを送っていた東京の理科系大学の教授については、 草の根BBSでプライバシーが公開され、その後、真偽のほどは分からないが大 学を去ったと言う。 第11回 1997.9.22発売 1997.10/13号 銀行システムの信じられないセキュリティーを大暴露! 日コン連が経営するパソコンショップ「ケーブル」には多くの人間が出入りする。 このため多くの情報も入ってくる。今回は、読者の皆さんも興味のある銀行関係 のセキュリティー情報について紹介してみたい。 まずは私どもの店に客として来た銀行員が語った本当の話。3−4年前、超大型 台風が到来したことがある。都銀D銀行の支店間をつなぐ専用回線の大部分は有 線によるものだが、一部マイクロウェーブと呼ばれる無線を使っているところが あった。あまりにも強い風だったため、アンテナが影響を受けたのかデータが飛 んでしまったのである。職員に非常召集がかけられ、徹夜でデータの突き合わせ が行われて、なんとか、翌朝の営業開始までには完全に修復出来たという。これ がもし、白昼に大型台風が襲ってきたなら、大混乱していたと想像される。ちな みにこの話については職員に完全極秘の箝口令が敷かれているというのだが−。 また、多くのマスコミが追いかけたが、実際に記事に出来なかったというものも ある。日コン連に出入りしていた高校生(当時)が、パソコン通信で知り合った 銀行のオンラインシステム開発者から聞いた話。 もともと銀行のオンラインシステムには排他制御処理がされていなくて、同時に 2カ所からアクセスが可能という。具体的にいえば、キャッシュカードを複製し て2枚にし、1枚のカードで処理している最中に、もう一枚のカードでも処理で きるということである。要するに1枚のカードで5万円引き出し作業を行い、終 了しないうちにもう一枚のカードで別のATM機で5万円引き出して合計10万 円出金していても5万円しか引き出したことにしかならないというものだった。 私はこの話をマスコミに流した。あるマスコミが銀行協会に問い合わせたところ、 「3年前にはそうであったのかもしれないが、現在はシステムが変えられ、その ような事は起こらない。その3年前でも銀行協会には各銀行からの被害届けはな く、そんな証言をしている方も実際にはそのような事はされていないのでは?」 という回答だった。そのため記事にはならなかった。 しかし、なぜか私が流したニュースが流出、ハッカー雑誌に掲載されてしまった。 しばらくして府立体育館隣の家電販売店(現在廃業)の店員が自分所有のカード や拾ったカードを複製して銀行で利用、あえなく御用となった事件も起きた。 また、パソコン通信などでも、「○○銀行ではハッカー雑誌に載っているやり方 で本当に2倍引き出せた」などと話題を呼び、あるマスコミ関係者に至っては、 「新幹線のホームにあるCD機では出来るらしい」と言い出す始末。日コン連の メンバーでも、「5年前、福岡の草の根ネットでその話を聞いた。言っていた人 は簡単に出来るからやってみろと、みんなに勧めていた」などなど。いずれにし ても真偽のほどは分からない。ただ、ネタ元のオンラインシステム開発者はハッ カー雑誌で掲載後、パソコン通信の世界から完全に姿を消したことは事実だ。 表に出ない犯罪で消えた18億円の金 私は1990年、コンピュータウイルスの解析資料を警察庁の官房長官企画室か ら強く求められた事がある。出し渋っていると、先にお礼として、警察庁平成元 年11月発行のコンピュータ・ウイルス等不正プログラム対策指針という冊子が 送られてきた。 その中に、こんなくだりがある。 「昭和63年に国内において発生したコンピュータ犯罪の件数は14件であり、 このうち現金被害のあった8件の被害総額は17億7000万円であった」 なんと1件当たり約2億2000万円にもなる計算。この警察庁内部資料を各マ スコミに見せると、異口同音に「みんな発表されていない」という。そのうちの 一人は「コンピュータ犯罪は社員がマスコミに告発した時だけ明るみになり、そ れ以外はすべて闇に葬られている。警察も銀行の協力がなければ捜査できないの で、銀行が公表しないでくれと言えば非公表にする」ともらしていた。 ハッカーがまだ珍しかった当時で18億円近くの金がコンピュータ犯罪で消えた のなら、ハッカーがうようよしている現在では、年間数百億の金が消えているよ うな気がしてならない。 第12回 1997.10.13発売 1997.10/27号
ダイアナ妃事故現場写真インターネット流出事件
9月15日、新宿でトークショーを行なった。その前日のこと、何気なくトーク ショの当日の司会者である「安芸智夫」ホームページを見ていると、「全世界征 服おまぬけ電波計画」ホームページにリンクが貼られていた。 そこに行くと「ダイアナ妃の写真、見ます〜?」とあり、クリックすると、「い けない画像7」というページに飛んだのである。 このホームページ開設者は香港在住の日本人で、その人は「いけない画像」のコ レクターであった。その中のひとつにダイアナ妃事故現場と思われる写真が含ま れていたのだ。ホンマかいなと思いつつも、”日コン連ニュースメモ”として各 マスコミにFAXした。 毎日放送がVTRを撮りに来たが、余りに悲惨な画像で放映出来ないと言ってい た。翌日、上京中に大阪新聞から電話がかかってきた。大阪新聞も、あまりに悲 惨すぎて写真は使えないと言う。16日には日刊ゲンダイから電話がかかってき た。日刊ゲンダイは、写真を無断使用したのが発覚するとパパラッチから憶単位 の賠償を請求されるから写真は使えない、と言っていた。大阪に戻って来ると、 東京の日刊スポーツから取材があり、写真を見る前はカラー面で使うと言ってい たが、写真を見た後では悲惨すぎて使えないと言ってきた。 17日に、日刊スポーツ、大阪新聞、日刊ゲンダイに記事のみ掲載された。それ を見て週刊誌6誌やテレビ局などから取材の電話が入った。またこの日には匿名 のハッカーから、アメリカサイトでダイアナ妃の事故現場写真を見かけたという 電話が入った。そのURLにつないでみると、香港サイトのものと同じ画像があ った。 19日になって、ロイター通信が全世界に向けて、「インターネット上にダイア ナ妃事故現場写真が出回っていて、18日イタリアの通信社ANSAや民間テレ ビがその写真を報道、日刊紙のラレプブリカも「死直前のプリンセス」の写真が インターネットに流れたとの記事を掲載した」と配信した。さらにロイター通信 では、イタリアのマスコミが報道したホームページの写真は、ROTTEN(ロ ッテン)と称するグループが入手して掲載したが、入手先は不明であると報じて いた。またこの日事故現場の地元紙フランスの大衆紙、フランス・ソワールもそ の写真を掲載したという。 しかし19日の夜になって、救急隊員のジャケットや3桁の緊急電話番号999 がフランスのものではなくイギリスのものであるから写真はニセものである、と いうニュースも流れ始めた。
報道後、ホンコンHPにアクセス殺到
わずか6日間に世界を揺るがす大騒動になったわけであるが、今回の問題点は2 つある。 そのひとつは、道義的・倫理的な問題。もうひとつは著作権の問題である。まず、 瀕死のダイアナ妃の姿を載せるという倫理的な問題であるが、タイなどの新聞で は事故事件などの死体写真を載せるのが当たり前となっている。日本ではテレビ や週刊誌や普通の新聞は、この写真そのものの報道・掲載を行わなかった。国内 のマスコミでカラー写真掲載を行ったのは一紙のみ。それは、大スポーツだった。 ところが、イタリアやフランスなどのマスコミはどこも写真そのものの掲載を行 っているのである。また、それが当たり前となっているようでもある。 もうひとつの著作権の問題であるが、今回のホームページの閲覧がいずれも無料 で行われている以上、個人が趣味で集めたものをみんなに見てもらおうとしても らっているだけなので問題はない、というのが一般的な見解であった。また、イ ンターネット上にある画面写真をマスコミが報道に使うことについては、上京し た際、インターネットに詳しい人達に聞いたところ、「この写真については出所 もまた本物かどうかも分からない以上、かまわない」という結論であった。ちな みに香港のホームページは、新聞の報道後、アクセスが殺到。1日に84000 回にも及ぶ写真の引き出し請求があったとか。写真は結局、仏捜査関係者によっ て、偽物と断定されたのだが・・・・・。
ホンコンURL http://ns1.hk.exa.net/~silkwood/japanese/othrside/pic7/ アメリカURL http://www.american-photo.com/paparazzi/diana/Di15.htm http://www2.rotten.com/rotten/diana701/di-acc.html
第13回 1997.10.27発売 1997.11/10号 ハッカーの新手のいやがらせ、ポケベル利用のいたずら電話
9月下旬から、針中野にある私の自宅に深夜連日、いたずら電話が同一人物から かかっていた。多分、ハッカーからであろう。「ぽっぽっぽっ、ハトポッポ」を 電話機のプッシュボタンで鳴らしていたり、「はぁはぁはあ」とか言っていた。 私は、腹に据えかねて”いたでん(いたずら電話)犯”に、「平野局の電話交換 機は最新のもので、発信元が記録できている」と伝えた。すると、次からは公衆 電話からかけてきていた。私はさらに「東住吉警察の方に被害届けを出した。1 週間ぐらいでおまえは捕まる。」とウソを言った。 それから平穏な日々が1週間続いたが、またまた連日深夜の”いた電”が再開さ れたのである。電話のベルが半回か1回なるだけ、つまりその電話番号が存在す るかだけを調べる、いわゆる”試しがけ”が1日に50−100件。実際に電話 がかかるのが1日に50件以上。そのうち、かかってきた電話の何回かに受話器 をとってみると、かけてきた人物はポケベルに「緊急事態・至急TELせよ 0 6−702−****(私の自宅電話)」とあったからTELしたと言う。かけ てきた人は、総てポケベル番号は親しいごく少数の友人しか知らせていないとい う。この人たちの職業は、高校生・大学生・専門学校生・会社員などとバラバラ。 お互いになんの関係もなく、ただひとつの共通点は、ドコモネクストのポケベル をもっていたことと、堺市または岸和田市に住んでいるという事だけだ。深夜2 −3時なので、かけてきた人も寝ぼけまなこ。しかも電話代は発信人持ち。ただ 深夜2−3時ではポケベルの電話を切っている人も多い。また、この時間帯、心 当たりがない大阪の電話番号に対するメッセージは間違いと判断、普通は電話は かけない。にもかかわらず、これだけの数の電話がかかってきているので、犯人 はドコモネクストのポケベル番号リストをもっていて、パソコンを使って片っ端 から自動発信をしてきていると考えられた。NTTドコモに抗議の電話をしたが、 電話受付センターの女性課長は、「同報発信契約した人からでないとパソコンか らドコモネクストには発信できない」と言い張る。こんなトンデモないコトをい う人は相手にせず、この”いた電事件”のナゾを推理してみた。当初の電話は、 堺・岸和田からだけであったが、その後は伊丹や茨木など広範囲にわたっている。 そのため、犯人がドコモネクストにかかるであろう電話番号群または電話番号が あるだろうと思われる群をインプットし、パソコンで順次発信。所有者がたまた まいた番号にメッセージが送られていると考えられる。 いずれにしても、犯人はパソコンの電源さえ入れていれば、不特定多数のドコモ ネクストにパソコンから自動的にメッセージを送ってくれるので、労なくして” いた電”が出来るわけだ。もちろん、警察が私の自宅の通信記録をとっても、犯 人からの電話番号は分からない仕組みとなっている。
事態を認識していないNTTの甘さ
私は、NTTドコモに対して、「ポケベル番号を教えていない第3者からもいた ずら電話がかかってくる事をアナウンスするべきだ」と主張しているが、パソコ ンからポケベルに自動発信する事が理解できない人が窓口責任者であるため、「 多くの人から同様の苦情がこない限り、注意を呼びかける事はしない」という。 今回の事件の問題点は2つ。”いた電犯”が善意の第3者をだまして、いたずら 電話をかけさせている点。そしてNTTドコモが、そのだまされる原因となった 「ポケベル番号を教えていない第3者がポケベルの番号を知ることがあり得るこ と」を認識せず、まったく広報していない点だ。 一般にハッカーは盲点をつくのがうまい。、NTTの情報通信研究所(神奈川県 横須賀市)にハッカーが侵入したのも記憶に新しいが、今回もNTTドコモの想 定外のシステムを悪用している。 つまりNTTのシステムはハッカーのアイデア力には全く対抗できていない、と いっても過言ではないのではないか。 それにしても連日続くドコモネクストでメッセージを見た人からの”いた電”、 いったいいつになったら、終息するのやら。
第14回 1997.11.10発売 1997.11/24号 ハッカーが見つけた問題のインターネットホームページ
ハッカーたちの開いているインターネットのホームページを見に行くと、いろい ろ問題のあるホームページの話が出ている。さすがハッカー、情報がめちゃめち ゃ早い。私が毎日インターネットに接続している時間は、わずか数分。それだけ でもマスコミをにぎわすホームページが次々に見つけられるのである。不思議に 思われるかもしれないが、それはハッカー関係のホームページに情報がつまって いるからである。 そこで見つけたのが「論談同友会」のホームページ。これは総会屋が開いている ホームページであると言われている。ハッカーたちがそのURLを広めたのは、 パソコン業界の代表・ソフトバンク社に対する攻撃が書かれていたからだ。私が 問題だと思うのは、ソフトバンク社の役員の自宅・住所電話番号・家族構成・e −mailアドレスなどが公開されている点である。「○○の自宅の電話番号は 03−○○○○−○○○○。いくら会社の広報に苦情を言っても無駄です。・・ ・」と暗に、自宅に苦情の電話を入れる事を勧めたり、個人名を挙げてセクハラ をしているとか書いている。 しかも、このホームページが日本の大手プロバイダーIIJの関連会社IIJメ ディアコミュニケーションズのサーバーに設置されている点である。私の自宅住 所が公開されているハッカーのホームページがアメリカサイトであった事から比 べると、日本サイトでの自宅住所電話番号公開が許されている点には驚きを感じ る。こんなプロバイダーが存在する以上、インターネットでのプライバシー保護 の法制化は必要であると考えられる。 もうひとつは、スポーツ紙やテレビのワイドショーなどで取り上げられていたの で有名になった「上野クリニック」のホームページ。各紙で私のコメントが紹介 されていた事でお分かりの通り、あれは私がハッカーの「病院サイトがこんなこ としていいのかなぁ」という書き込みを見てその存在を知り、各マスコミに発表 したものである。 この「上野クリニック」は、包茎中心の形成外科クリニック。ホームページのク イズはまず、看護婦とOLのコースで好きな方を選ぶ。クイズに正解すると、モ デルの女性が服をつぎつぎ脱いでいくというものだ。私も興味をもってクイズに 答えていった。おそらくパンティ一枚になった段階で、クイズは終了するものと 思っていた。しかし意外な事にヘア丸出しの全裸までいきついてしまった。さら に驚くことは全裸ヘア画像では、その部分のズームアップ機能までついていた。
ヘア画像見たさにアクセスが5万件
私がこのホームページに警告を発したいのは「18歳未満不可」の表示がない点 だ。ヘア画像提示の場合、ホームページ開設者は、通常18歳以上であるかどう かを確認するのが「慣例」となっている。そこで「NO」を押せば、ヘア画像に はたどりつけない仕組みになっている。が、いずれにしてもNOを押す人はまず いない。そんな事は「形式的で無意味」という考えもあるが、その選択があるこ とで、そこから先には、ワイセツな画像が出てくると容易に推測できる。 今回のクイズはそれがないため、包茎に悩む中・高校生がクイズに答えていくと、 ヘア出し全裸女性が飛び込んできて・・。あの画像は中高校生にとってはあまり に刺激が強すぎる。マスコミに取り上げられて、「上野クリニック」のホームペ ージのトップメニューからそのクイズへのリンクは中止されたが、そのホームペ ージには1週間で5万件を越えるアクセスがあった。ヘア見たさの人がどれだけ 多い事か。ただしクイズのURLへ直接アクセスすると現在でも「ヘア出しクイ ズ」は健在である。欄外にそのURLを書いてあるが、18才未満の人はアクセ スしないで欲しい。 インターネットのホームページは、個人が好き勝手に情報を流せるお気軽媒体で あるが、非常に多くの人の目にふれる事もある。個人発信情報と言えども、ちょ っとした週刊誌並みの影響力があることを考えて欲しい。
論談同友会のホームページURL http://www.iijnet.or.jp/rondan/ 上野クリニックのヘア出しクイズURL http://CGI-CLUB.UENO.CO.JP/quiz/quiz.html
第15回 1997.11.24発行 1997.12/8号 国防秘密も簡単に入手している日本の高校生ハッカーたち
最近また、ハッカーがかかわる事件が増え始めている。とくに注目をしたいのは、 某大手コンピュータメーカーの関連会社F社の社内データがすべてハッキングさ れ外部に流出していること。会議の議事録から各社員のE−MAILの中身まで だ。このように今やハッカー達はしたい放題、やりたい放題である。国の重要機 密も例外ではない。 ある大阪の高校生ハッカーは高度な技術がいる人工衛星のハッキングを専門にし て、国防関係データを入手するのが趣味という。またある時、某全国紙の記者か ら、こう聞いた。「国民が見てはいけない施設の写真が、ハッカー間で流れてい る。」そのデータは見ることができなかったが、「記事にしないか」という私の 問いに「記事にすれば、どこからその画像を手にいれたか、裁判所からいってく るだろうから、記事には出来ない。」という。それならなぜ、そんなデータを入 手したのか疑問は残るが、いずれにしてもハッカーたちは国のマル秘データは確 実といっていいほど入手しているのである。 ところで、ハッカーって一体どんな人種なんだろうか? たいていのハッカーたちは、表向きはきわめて健全な日常生活を送っている。か つて日コン連を通じてテレビのニュース番組に紹介した学生ハッカーの場合、大 阪・A放送のアルバイトADを4年間していた。もちろん、A放送の人は誰ひと りとしてこのハッカー特集に「顔モザイク音声変調」で出演したハッカーが自分 たちの同僚とは思わなかったようだ。 また昨年1月、私あてに要らないものを勝手に注文して送り付けてきたニフティ のアクセスギフト事件について、犯人らしい人物が浮かんできた。その人物とは、 驚く事に府下の某大学の講師。なぜ分かったかというと、この講師は、自分が勤 める大学のメーリングシステムにハッキングしたIDと私のIDを登録していた からだ。その後、この大学に関する情報を集めているうち、犯人らしい講師が、 大手メーカーのインターネットのサーバーにメーリングシステムを開設して、訴 訟沙汰になりかけていたという情報が入った。しかもニフティのハッキングID を数十個持っているということも分かった。私は機会があれば、本人に直接話を 聞きたいと考えている。
”情報処理1種”持つ小学生ハッカーもいる
このほか、新聞紙面をにぎわせた大阪市立図書館システムに入り込んだハッカー についても、犯人は15歳の中学生だというウワサが流れている。この中学生は 「ハッカーが侵入した事実を隠さず公表せよ」という不適なメッセージを残した り、不正アクセス防止用の文献を管理者に教えていたという。近頃では、ハッカ ーは低年齢化が進み、小学生ハッカーもいる。私は、その一人の泉大津市在住の 小学生ハッカーとパソコン通信のチャットで話した事がある。この小学生、情報 処理1種の資格をすでに取得し、自分で草の根BBSを開局していた。漢字が分 かるか?と聞けば、バカにするなと怒られたが、とにかくスゴイ。ハッカーかと 尋ねると、「ハッカーではない」と答えていたが、ハッカーが集結する草の根B BSのアクセス番号を教えてくれた。そんな番号を知っているという事は、とり もなおさず完全なハッカーである証拠だ。 先日、インターネットのとあるホームページに書き込みをした。すると、営業書 き込みという理由で削除された。私は、カチンときて、私が主催する草の根BB Sのケーブルネットに「ハッカーどもに通達。私の掲示を削除した●●のホーム ページなんか潰してしまえ」と冗談で書いた。翌日、そのホームページを見に行 くと、いつもの画面はなく、「サーバートラブルにつき、しばらくサービスを中 止させていただいていおります。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」の表示 が出ていた。腕のいいハッカーなら、インターネットのホームページ潰しは、キ ーをひとつ押すだけでOKとも言われている。マスコミのホームページを潰した り、いたずら書き換えは日常茶飯。日本のハッカーのレベルも欧米並みになって いるのである。 日コン連のホームページ http://webbase.sun-inet.or.jp/~nichikon
第16回 1997.12.8発売 1997.12/22号 インターネット珍商法・テレクラサクラ撃退法販売で200万円
インターネットの世界では、色々なものが販売されている。普通の店で手に入る ものから、薬や猥褻画像、ピストルなど法に触れる物騒なものもある。このうち インターネットならではというのが、ハッカー情報に代表されるアングラ情報を 不特定多数に販売する事である。たとえば、ハッカー主宰のホームページに行く と「変造テレカの作り方教えます」、「個人の犯罪歴教えます」など穏やかなら ぬ危険な情報のメニューもいっぱいある。 そんな中で、ひときわ目を引いたものを紹介してみたい。 日コン連の運営する草の根BBSである「ケーブルネット」を利用しているある 女子大生が日コン連に来たことがあり、その時、彼女がバイトでしているテレク ラの女の子用”サクラ”のマニュアルを見せてくれた。私は、そのマニュアルの 存在自体がいかがわしいと思いマスコミに発表すると、日刊スポーツや大阪新聞 が取り上げた。 大阪新聞では、実際に日コン連でその女子大生にテレクラのサクラをさせ、その 模様を報道した。 この時、私も取材に立ち会っていたが、気になったのは、ハナから会う気もない のに、その女子大生が「6時に梅田の・・」など片っ端から会う約束をしていた 事であった。そんなサクラの空約束で無駄な時間をとられ、泣かされている男性 も多いことだろうと思われた。 ところがある時、インターネット上で、「サクラ」という人物が主宰する「サク ラバスターズ」というホームページを発見した。ここでは、テレクラのサクラに ひどい目に遭ったという体験記のほか、サクラかどうかを見分ける方法を販売し ていた。料金は伝言ダイヤルのサクラ識別が8000円、ツーショットのサクラ 識別が5000円。双方セットでは、サービスでサクラ・マニュアルをつけた上 で11000円であった。実際に、11000円を指定された銀行口座に振り込 むと、A4換算で3ページ分の電子メールが送られてきた。 その方法で実際に識別したところ、サクラか素人かの識別が完全に出来た。大阪 新聞の記者から、いつも利用している伝言BOXで試したところ9割までがサク ラ開設のBOXであった、という驚きの報告も届いた。この話は、大阪新聞、日 刊ゲンダイ、週刊大衆で私のコメント入りで大きく報道された。私は、こんな情 報の売り方をするのはハッカーだと決めつけ、主催者「サクラ」をハッカー呼ば わりしていた。
なんと「サクラ」さんは上場企業の管理職!
しかし今回、この連載にあたり、「サクラ」さんに直接取材を申し込んだ。その 結果わかった事は、「サクラ」さんは、大阪市内北部に住む33歳。既婚で妻ひ とりキープ女性は常時4名という。職業はサービス業の技術職で、なんと身分は 上場企業の中間管理職であり、ハッカーではなかった。 ちなみに「サクラバスターズ」の会員、要するにサクラさんにお金を支払いサク ラ識別方法を伝授された人は200名にものぼり、売上も200万円に達してい るという。ここで気になるサクラ識別方法であるが、簡単に原理を言えば、素人 もサクラも同じ様に電話をかけるが、サクラの場合には業務連絡モードがあるた め、そのモードに入れるかどうかでサクラかどうかを判断するというものである。 もちろん、業者側もシステムを変更したりするが、「サクラバスターズ」側も負 けじと研究に余念がない。ちなみに、「サクラ」さんは、売上200万円のうち 150万円をあらたなサクラ識別の研究費にあてたという。 6万件以上の参照数がある超人気ホームページ「サクラバスターズ」主宰の「サ クラ」さんのもとには、業者から「営業妨害にあたり、このままでは法的処置も 辞さない」とかいう抗議メールも届くというものの、「サクラ」さんは「”サク ラ”のいない本来のテレホンコミュニケーションを立ちあげていきたい」と自負 し、今後とも業者と「サクラバスターズ」との終わりなき戦いは続く。 それにしても、サクラ識別情報の販売だけで、200万円もの売り上げ。なんと もはや、インターネットの世界ではどんな情報でもお金になるものである。 サクラバスターズURL http://www.intacc.ne.jp/HP/sakura/
第17回 1997.12.22発売 1998.1/12号 ’97・INETを総括 横行するハッカー。日本中を巻き込んだ「酒鬼薔薇」実名HP 今回は、年度末にあたり、今年1年のハッカーがらみの事件を振り返ってみた い。まずは、年明け早々に日コン連運営の「パソコンショップケーブル」にやっ てきたのが、京都在住で年収5億円の帰国子女高校生ハッカーグループだ。この グループのボスの指令は、テープでしか聞けなかったが、マフィア系のハッカー という。ケーブルに出入りしていたリーダー格のハッカーは、父親が京都に本社 のある大手女性下着メーカーの大幹部。その父の仕事の関係で、小学校、中学校 時代は家族とニューヨークに住んでいて、そこの日本人学校で知り合った仲間が、 現在のハッカー仲間なのだそうだ。 日本の高校生ハッカーが上下関係のしっかりした「組織」であるのに対して、帰 国子女のそれは「仲間」といった感じである。ボスは京都の公立高校に通い、年 収は5億円。学校の帰りに400万円もするオートバイ・ハーレーダビットソン を買った事があるという。店員に「このバイク下さい」と言った時、その店員は 「お客さまお値段おわかりでしょうか?」と怪訝な顔をしたとかで、学生カバン から現金400万円を差し出すと、店員が仰天したというエピソートもあるとい う。このハッカーたちの収入源はガン検査を受けたなどの病院患者ハッキングデ ータの外資系生命保険会社への販売、東南アジアの日本の大手パソコンメーカー の工場で夜間こっそり作られたパソコンの販売先斡旋手数料などであった。 日本のハッカーたちの「犯行」では今年特に目立ったのは、不謹慎ゲーム。日コ ン連からマスコミ発表したものだけでも「HIVゲーム」「O157ゲーム」「 ペルー人質救出ゲーム」「酒鬼薔薇ゲーム」と多数ある。 また、今年の特徴としては、インターネットでチェーンメールの様に流れ出た怪 文書の数々が挙げられる。 特に有名なのが光通信からの増資がドタキャンとなった直後のソフマップについ て書かれた「ソフマップが危ない」だ。これにはある団体などは、実際にソフマ ップに押し掛け、お金と同様に使える「ルピー」を引き出したとか。
事務所から盗まれた挙式招待状がHPに
また、怪文書ではないが、私が4年前、式直前に破談となった結婚式の招待状が 4月、事務所から盗まれ、6カ月後に、ホームページにアップされるという事件 も起こった。 それ以外に、朝日放送のホームページに猥褻画像が入れられたり、大阪市の図書 館システムに中学生ハッカーが侵入、セキュリティ対策への説教をするなどハッ カーになめられた事件も続出した。 最後に、1997年度の最大のニュースは、なんといってもインターネット関係 である。ダイアナ妃の事故現場写真の画像(のちにニセモノと判明)が出回った り、ハッカーが開設した酒鬼薔薇のホームページで、少年の実名や写真、住所、 家族氏名が出回った事が挙げられる。インターネットという何の規制も受けない 新たな媒体の出現のため、酒鬼薔薇少年の実名が翌日には日本中に飛び交った。 さらにこの酒鬼薔薇少年の実名掲載のホームページをことごとく潰したとハッカ ーから総スカンをくった朝日新聞の不買運動も起こった。 現在は、酒鬼薔薇少年の本名で開設されたホームページについては、朝日新聞の 2の舞いになりたくないという事で、どのマスコミも問題にしなくなった。 要するに現在では大手マスコミもハッカーの強さにビビる様になってきたわけで ある。ハッカーは来年も、したい放題で大暴れであろう。
酒鬼薔薇少年 URL http://members.tripod.com/~azuma2/ 毎日新聞糾弾 URL http://www.geocities.co.jp/HeartLand/1964/mainichi.html/
第18回・最終回 1998.1.12発売 1998.1/26号 INET”ポケモン・ハッカー”の脅威
テレビ東京系の人気アニメ番組「ポケットモンスター」、略してポケモンについ て年末来、インターネット界でも波紋が広がっている。それは、問題のシーンが 写っているビデオを1本3000円で販売するという掲示が多く出現した以上に、 問題のシーンの画像表示や動画再生を行うホームページが、こどもたちの入院騒 ぎ発生後、即座に多数出現したことである。 事件当日は、大阪新聞から「インターネットでは動画が扱えるため、ハッカーが ポケモンを悪用しないか?」という取材を受けたので早速、インターネットを捜 してみると、2−3分でポケモン関係のホームページを見つける事ができた。 そのうちの一つ、「ポケモン大好き」ホームページでは、ポケモンの放映中に流 れた問題の赤・青点滅のシーンを繰り返す動画が置かれていた。”万が一、万が 一見ててヤバイなと感じたらやめて下さい!「気分が悪くなった」ってメールく れた方もいますが、こんなもので本当に病院に運ばれたらダサすぎますよ。・・ ・・”とか書かれていた。 私は、こんなものを見ているだけで気分が悪くなるものなのか、半信半疑で、部 屋を真っ暗にしてインターネットの画面を見てみたのである。赤・青の光線点滅 が繰り返されるシーンを凝視してみると、気持ち悪い画像ではあったが見続けて いられた。が、3分ほどたったと思われる頃、「来たッ!」という感じになった。 首が痛くなり、顔がほてり、冷や汗が出て吐き気がしてきた。これはヤバイと思 い、画面を見るのをやめ、大阪新聞に電話を入れた。記者と電話で話をしている 時、私はロレツが回らなくなっている自分に気付いた。 日コン連ニュースでそのことを流したところ時事通信から電話がかかってきた。 時記者に問題のホームページのアドレスを教えた。あとで聞いたところその記者 も記事を書くために画面を見ていて頭が痛くなったと言っていた。彼が言うには、 問題のシーンが目に飛び込む時間が、テレビでは15秒といった長さなのに、パ ソコンでは接続をやめるまでずっとだからではないか、ということであった。
突然、動画メールが送られてきて・・・
日コン連の運営するパソコンショップ「ケーブル」に常連客の内科医が来たので、 そのホームページを実際に見てもらうと、「気持ち悪い画面だ」と言った。彼に 簡単に説明してもらった。それによると、光の点滅は、てんかんの検査によく使 われるそうで、光の点滅によって脳は刺激を受け、体質によっては脳が間違った 反応ボタンを押してしまうらしい。例えば、運動神経のボタンが間違って押され た人には痙攣やしびれなどが発生し、自律神経のボタンが間違って押された人に は発汗や吐き気などが現れるという。 私の顔のほてりと発汗、吐き気は、点滅画像によって脳が自律神経のボタンを誤 って押してしまったのが原因だということで、あの画像を見続けていると多くの 人が同じ症状になり、私だけ特別ではないから心配いらないとも言われた。 さて、今後の問題は大阪新聞の記者も指摘したように、ハッカーの”ポケモン症 状”の悪用だ。 インターネット上に面白いホームページがあると聞いて見てみると、痙攣を起こ してひっくり返ってしまうとか、知らない人から動画ファィルが送られてきて、 再生してみると痙攣を起こすものだった、とかいったことが今後、発生しないと も限らないからだ。 インターネット上でのハッカー対策は従来、ハッキング侵入コンピュータウイル ス侵入しか考えられていなかったが、これからは”ポケモン・ハッカー”対策も 必要となる。全世界1000万人のインターネット利用者に動画のメールが無差 別に送られ、受け取って再生した多くの人々が痙攣を起こして倒れてしまう−− −といった事件の発生も想定される。 ポケモン騒動は、ハッカーに恐ろしいヒントを与えてしまったものである。
ポケモンHP URL http://members.tripod.com/~convenie_maniac/ http://www.jpx.com/pokemon/